AIの進化と影響

AIの進化

 最近ニュースなどでAI(人工知能)技術の話題がよく取り上げられています。AIの概念や研究自体はわりと古く(1960年代)からあったそうですが、2000年代に入って「機械学習」「ディープラーニング」「ビッグデータ」などと呼ばれる新しい技術によって、現在に至るまで飛躍的な進歩を遂げています(現在は「第3次AIブーム」と呼ばれているそうです)。
 中でも特に注目されているのが、「生成系AI」というもので、これは大量のテキストデータを学習することで、回答を自動で作成(生成)できるAIのモデルです。最大の特徴は、これまでのAIには難しいとされてきた、まるで人間が書いたかのような自然な文章の作成で、同じ質問を投げかけても、毎回オリジナルな回答を即座に生み出すことができます。
 こうした新しい技術に対する世間の反応はさまざまです。肯定的に捉えるものもあれば、脅威とみなす人もいますが、いずれにしてもその反響の大きさからは、AIに対する世の中の関心の深さが感じられます。

世間の反応

 アメリカの新興企業が2023年11月に公開した、生成系AIを使った対話型ソフト「チャットGPT」が話題になっています。
 東京大学副学長の太田邦史教授は、生成系AIの現状や付き合い方に関する声明を発表し、その中で「PCやインターネット、スマートフォンの登場時と同等、あるいはそれ以上の社会的な影響があると思う」と述べました。一方で、「書かれている内容には嘘が含まれている可能性がある」ため「人間自身が勉強や研究を怠ることはできない」と言っています。
 国内の大学も相次いで対策に乗り出しています。レポートでの利用を制限したり、情報流出の危険性を学生に注意喚起したりする動きが広がっているといいます。「レポートは学生本人が作成することを前提としているが、現状では生成系AIを用いて作成した論文・レポートだと高精度で見出すことは困難な状況」と太田氏も指摘しています。
 また、文部科学省は、「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を発表し、小学校・中学校・高等学校における利用や、作文コンクールなどにおける扱いについての指針を示しました。
 影響は教育界だけに留まりません。
 投資銀行ゴールドマン・サックスは「世界全体では最大で3億人もの雇用が生成系AIの影響を受ける可能性がある」と予測しました。また、実業家イーロン・マスクやアップルの共同創立者スティーブ・ウォズニアックらが、AIには社会と人類への深刻なリスクがあるからとの理由から、「AIの開発を一時的に止めるべきである」と発言し、これに対してマイクロソフト創業者で慈善活動家のビル・ゲイツ氏が、「それは問題解決にはならない」との見解を示すなど、さまざまな議論が起こっています。

私たちがなすべきこと

 現在の世の中は、生成系AIという新しい技術に対して、人々がどう対応すればいいいのか混乱している状態であるように見えます。
 AIによって今後なくなっていく職業(決まった業務をルール通りにこなす仕事、正確性や精密さが求められる仕事などが挙げられています)が予想されたり、「英語の勉強はしなくてよい」「プログラミングを学んでおかないと置いて行かれてしまう」、逆に「仕様通りの仕事をするだけのプログラマーは必要なくなる」など、さまざまな意見が飛び交っていますが、そのどれが正しくてどれが間違っているのか正確に分かる人はいません。危険なのは、そういう断片的な情報に惑わされて、今やるべき勉強を疎かにしたり、新しい流行りの勉強ばかりに傾倒してしまったりすることです。
 小中学校で習う程度の科目は、どれも普遍的な内容ばかりです。見た目は地味かもしれませんが、こういう勉強を一生懸命やって学力の土台をしっかりさせておくことで、将来どんな能力が必要になっても対応できる人間になります。まずは目の前の勉強にしっかり取り組み、根本的な学力を身に付けましょう。